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非公開: 蒸留プロジェクトのはじまり

非公開: 蒸留プロジェクトのはじまり
新蒸留研究所は、前田薬品工業の新規事業として始まりました。まず社内から有志を募ってできたのが、ブランディングチームです。私たちがどのように新蒸留研究所を立ち上げたか、その経緯をお伝えします。

はじまりの場所

前田薬品工業は、1958年の創業時から、外用剤(貼り薬や塗り薬)を中心とした医薬品の研究開発を行ってきました。近年は、その知見とノウハウを活かした化粧品を開発したり、ハーブの力で美と健康を支える施設「ヘルジアンウッド」をプロデュース。人々の健康寿命を延ばし、健やかで豊かな暮らしに貢献する事業を展開しています。

そんな中、202◯年◯頃に、新たに蒸留器を譲り受ける話が舞い込みました。これを契機に、精油や芳香蒸留水だけではなく、ジンなどの蒸留酒の開発も目指して、本格的に蒸留に関する研究開発事業に着手することになりました。

新たに蒸留器を置くのは、かつて内用剤(飲み薬)を製造していた富山市内の本社建物の一角。

まず、この新規事業を進めていくため、社内公募で自主的に集まったメンバーを中心に「ブランディングプロジェクト」チームを作りました。さらに、外部の建築士やデザイナーもメンバーに加わり、「ここがどのような場所になっていたいか」という空間づくりから考えることで、具体的なイメージを膨らませていきました。

それと同時に、香りや蒸留酒に関するリサーチを進めました。

「精油」や「芳香蒸留水」については、ヘルジアンウッドでの経験もありましたが、メンバーは改めて基礎から研究するためアロマテラピー検定1級とメディカルハーブ検定を取得。

「蒸留酒」については、クラフトジンにも詳しい地元のバーテンダーに相談したり、勉強会や各地の蒸留所を視察するなど、研修を重ねています。

(注)医薬品だけではなく予防医学や未病分野へ展開するきっかけになった経緯や(前田社長の)想いもあるとより理解は深まりますが、他事業のことも含み長くなってしまうため、この案では割愛しています。必要でしたらそれでひとつ記事を作ってもよいかもしれません。

「蒸留所」ではなく「研究所」である理由

実は当初、研究所を設立する予定はありませんでした。新たに蒸留器を導入するので、それを使った新規事業として蒸留酒も製造しよう、という考えです。ところが、ブランディングプロジェクトのメンバーで何度も議論し、外部を含む様々な専門家と意見交換をするなかで気づいたのが、「蒸留」が持つ大きな可能性でした。

蒸留が抽出を得意とする「香り」は、アロマテラピーなどの予防医学や未病の方への効果が注目されていますが、それに加えて、蒸留酒の世界ではクラフトジン(※)が普及しはじめ、新しいムーブメントが生まれていたからです。

「香り」のもととなるボタニカル(植物)を中心とした自然の恵みの豊かさ、それを無色透明なアルコールに乗せて香りを楽しむジンという蒸留酒の不思議さに、私たちはすっかり魅了されたのでした。

そこで、蒸留器を設置する場所を単に新製品を作る場所にするのではなく、もっと外に開かれた、「香り」を楽しむ人々が集う場所になることを目指し、この街のシンボルになり得るような空間にしたいと考えました。

この想いを強くしたのは、ある蒸留所を視察した時のことです。すでに国内外から高い評価を得ているその蒸留所には、地域が醸す独特な風土と一体になりながらも、これまでにない「新しいものが生まれる予感」をひしひしと感じる場の力があったのです。

「ジンや蒸留をもっと気軽に楽しむカルチャーを作りたい」

「よりオープンに、どんな人ともこの歓びを分かちあいたい」

そして、私たちのルーツである製薬会社らしく、様々な「実験」が試される枠のような場所であること。これまでの固定的な蒸留所のイメージを超えて、日々挑戦を繰り返す創造的な場所であること。プロジェクトチームのメンバーから出た意見を集約すると、それは「蒸留所」というよりは、新しい蒸留についての「研究所」である、という発想につながっていきました。

※クラフトジン:主に小規模な蒸留所が、原料や製法などにこだわって造るジンのこと。特に日本では、その地域の素材を使った強い個性を感じるジンが特徴となっている。

名称の決定

プロジェクトチームのメンバーで何度も話し合った結果、名称は「新蒸留研究所」に決まりました。

「新」には、単純な「新しい」ではなく、「創造すること」「変化しつづけること」「常に自由であること」という意味が込められています。